暗い部屋、物音一つしない都会の夜。
自室のベッドで横になりながら賢は呆然としていた。冷汗が全身を伝い、震えが止まらない。
夢を見た。
決して叶うことのない夢を。
自分は彼の隣にいた。まるでそれが当たり前の様に笑い、抱き寄せられ、
都合の良いセリフを耳元に聞いた。そして __________________
「本宮‥‥」
声に出して彼の名を呼ぶ。
何度も夢見たことだった。でも、こんな生々しい夢は初めてだった。
_______________________ 大輔が僕を‥‥‥
どこかおかしくなってしまったみたいに身体の熱がおさまらない。
「っ‥‥あぁ」
小さく声に出すと、夢の続きを見ているようだった。
今自分を掴んでいるのは大輔の手だ。
いつもより少し低いトーンで繰り返し名前を呼ばれる。
押さえつけられた腕も、宥めるような口付けも、彼らしくどこかぎこちなく優しいものだ。
「もとみ‥やっ‥‥」
下肢を手で触れると身体が大きく震えた。
戸惑いが一瞬脳裏を掠めたが、すぐに熱に流される。かたく瞳を閉じて彼の手を思い描いた。
「‥‥あっ、はぁ」
声を殺しながら思う。日の光の下にいる彼ではなく、自分を欲望のままに求める彼を。
込み上げる感情だけで自分を抱く大輔を。
初めて会った時のことは覚えていない。思い出せるのは自分が正気に戻ってから後のことだけだ。
それまでは気付かなかった。彼があれほど強い瞳をしていることに。
誰よりも強く、激しいものをその内に持っていることに。
たぶん、それに気付いた時に好きになったのだと思う。
「んっ‥‥」
自分自身の間欠的な声と、濡れた音が静かな部屋に響く。
服の下に差し入れられた手はもう自分の意志とは無関係なところにあった。
何度も触れた場所は、はっきりと欲望を表している。
だが、それを恥じる気持ちを感じる余裕もなかった。
今はただ、この衝動的な情動をどうにかして押さえることしか考えられなかった。
こんな自分を彼は軽蔑するだろうか、呆れるだろうか‥‥‥‥嫌うだろうか。
「や‥‥いやっ‥だ」
_______________________ 嫌われたくない‥‥‥嫌わないで
誰に嫌われても、キミにだけは嫌われたくない。
刺すような不安は強烈な快楽と共にあった。
それでも覚えていることはある。
所々抜け落ちた記憶の中で、やはり覚えているのは自分を見る強い意思を持った眼差しだった。
時には敵意を含んだそれは、だが不思議と暖かいものだった様に思える。
おそらく彼の本質がそういうものだったからだろう。暖かくて、優しい彼の本質が _______________________
「‥‥大輔っ‥あぁ!」
ビクリと一度大きく痙攣する。
シーツにしがみ付きながら必死で荒い息を押さえる。
手のうちに吐き出した欲望の証を見て熱を帯びた頭が急に冷めてきた。
_______________________ 僕は何をしているんだろう
大輔は僕のことを友達だと言ってくれているのに、
そんな彼に僕は何て下卑た感情を抱いているのだろう。
彼はこのことを知らない。そんなこと考えもしないに違いない。
_______________________ なのに僕は
コトン、と音を立てて壁にもたれかかる。このまま消えてしまいたかった。
もう彼に会いたくはない。こんな想いを持っていることを知られたくない‥‥‥
それでも。
きっと明日になれば自分は変わらず友達のフリをして彼に接するのだろう。
だって少しでも傍にいたい。友達としてでもいいから笑いかけてほしい。
_______________________ 少しでもいいから僕を見てほしい
_______________________ 何て惨めな僕
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