SEIKOの秘密その14

今回は、国産初の自動巻き機械であるSEIKO:11Aです。




これは、1957年製の中期の11Aです。
12時位置にある巻印(パワーリザーブ・インジケーター)が、最大の特徴ですね。



発売当時('50年代後半)は、まだ自動巻きの意味が完全に浸透していなかった為、
問題が起こる事が予想されたと思われます(実際に発生していた?)。
それを考慮しての巻印機能だったのでは、ないでしょうか??? (謎)

1.自動で巻き上げる事への不安感(手巻きと違い、本当に巻き上がっているのか分からない・・・)への対応。
つまり、自動で巻き上がっている事を証明(アピール)する為に巻印が付けられた様です。
(SEIKO:AGS系の初期のインジケーターと同じ意味合いですね。)

2.実際に装着していないと巻き上がらない自動巻きの巻き上げ不足による時計の停止を知らせる為の機能。
当時は、手巻き全盛だった為、時計のゼンマイを巻けば、36〜40時間程度は、時計を使用しても
放置しても問題なく動作していました。その手巻き時計に慣れた感覚で、自動巻きを使用すると、
あまり携帯せずにいた場合、完全に『巻き上げ不足→時計停止』となってしまいます。
したがって、現在の巻き上げ量を知らせる事で、『巻き上げ不足』への注意を促したのではないでしょうか???

3.上記の理由と似ていますが、11Aの巻き上げ効率の関係で、実際に時計を腕に装着していても、
巻き上げ不足が発生する可能性があった事も考えられます。そこで、機構的な意味での
巻き上げ不足による時計停止に、注意を促す意味合いもあったのかも知れません・・・。(根拠ナシ!!)

と、この様な理由が考えられるのですが、いずれにしろ、時代背景や技術の壁を乗り越えつつ、
新しい技術を世の中に送り出そうとする企業姿勢と
『時計は、時を刻んで(動作して)こそ、時計である。(当然ですが・・・。)』という
原則を守ろうとするセイコーさんのスタンスの現われと受け取る事も出来ます。
(誉め過ぎか・・・。:爆)


巻印の目盛りは、ゼンマイの巻き上げ量を『時間』単位(おおよそですが・・・。)で、表しています。
下の画像は、フル巻き上げと巻き上げゼロの状態です。
手巻き併用の自動巻きなので、手で竜頭を巻き上げても、ローターがゼンマイを巻き上げても
巻印は、巻き上げ量を表示します。(当然と言えば、当然ですが・・・。)




では、機械を見てみましょう。




チラ付きテンプと凝縮した感じの機械の無骨な雰囲気が、とても美しいです。
自動巻き全盛期の機械とは、明らかに異なる形状ですね。

この11A系の最大の特徴である巻印は、故障も多かった様です。
現存する11A系もこの巻印が、故障している場合が多く、修理も容易では無い様です。
したがって、当時('50年代)の加工技術で、この機械を量産したセイコーさんは、
かなり苦労をされた事だと思います。

当時は、時代的背景から採用されたであろう巻印の機構が、今となっては、
国産初の自動巻きの象徴的存在である事は、まさに運命的とも感じられますね。
とっても、ミーハーな考えですが・・・。(反省!!)