登山データ
富山県立山町、上市町
2999m
2005.8.16(火)〜17(水)曇り時々晴れ
歩行時間=14時間50分(登り7時間45分、下り7時間05分)
<1日目:3時間40分>
室堂(13:20)−雷鳥平(14:00)−別山乗越(16:20)−剱沢キャンプ場(17:00)(テント泊)
<2日目:11時間10分>
剱沢キャンプ場(4:50)−剱山荘(5:25)−一服剱(6:00)−前剱(7:00)−剣岳山頂(8:55−9:15)−前剱(10:30)−一服剱(11:15)−剱山荘(11:40)−剱沢キャンプ場(12:35−13:15)−別山乗越(14:30)−雷鳥平(15:35)−室堂(17:00)

登山紀行
 いよいよこのHPも100座目になる。記念になる山を求めて、日本百名山の一つで、もっとも険しく、もっとも風格があり、そしておそらくもっとも危険な「剱岳」に挑戦をした。深田久弥も「北アルプスの南の重鎮を穂高とすれば、北の俊英は剱岳であろう。層々たる岩に鎧(よろ)われて、その豪宕(ごうとう)、峻烈、高邁の風格は、この両巨峰に相通じるものがある。」と記している。
 1日目早朝5時に家を出て、自動車で延々6時間、11時に立山駅に着いた。本来ならここから美女平までケーブルで行くはずだが、土砂崩れでケーブルが運休し、代行バスが室堂まで直通で走っていた。12時にバスに乗り、13時過ぎ、室堂に到着。ここからいよいよ歩き始める。硫黄が勢いよく吹き出している地獄谷を見ると、立山が活火山であることを再認識する。色とりどりのテントが花開いている雷鳥平を過ぎると、雷鳥坂の急登にさしかかる。テントやら食料品やらで10kg以上の荷物を背負っている身にはとても厳しく、2時間以上かかってあえぎ登っていった。別山乗越では剱岳が一望できるはずであったが、あいにく雲がかかり、その隙間から時々恥ずかしげに顔を出すだけであった。ここから、北側に下り、剱沢でテントを張る。剱岳は相変わらず顔を出したり隠れたりしていたが、明日の快晴を願って、日没後すぐに寝た。
 2日目。早朝からごそごそしている人の音や声で目が覚め、4時半に起床。準備をして出発。見事な快晴で、剱岳も巨岩の固まりを惜しげもなく見せていた。余計な荷物はテントに置き、日帰りに必要なものだけにしたのに、それでも剱山荘を過ぎると、だんだんと傾斜がきつくなり、ペースもだんだん落ちてきた。途中、後立山連峰に登る御来光を拝んだが、本当に神々しいものであった。一服剱では、眼前に前剱が覆い被さるようにそびえ、ストックもじゃまになるだけなのでしまい、その代わりに手袋をはめた。ここからは垂直な壁を何度も乗り越え、足許の切れ落ちる岩場をトラバースし、はらはらの連続であった。前剱を過ぎ、しばらくすると、いよいよ有名な「カニのタテバイ」にさしかかる。垂直な巨岩に架けられた鎖だけを頼りにまっすぐ直登する。下がどうなっているかなんて、とうとう見ることができなかった。そのあとしばらくガレ場を歩くと、頂上の祠が現れた。早朝は快晴だったのに、いつのまにかガスがかかり、頂上では何の展望も得られず、祠の前で写真を撮るだけであった。
 さあ、下山。あの急勾配を下るのは、登るよりももっと怖い。慎重に行こうと決心をして出発。下山し始めてすぐに、登山コースと下山コースが分かれ、下山コースに行くと「カニのヨコバイ」が待っていた。垂直な巨岩に真横に鎖が架けられ、ちょうど足のくるあたりには10cmほどのくぼみが削ってある。当然、下にあるのは奈落の底だけである。こんなところを10mほどトラバースしていく。下を見ないで、3点支持を守りながら、ゆっくりと足場を手探りならぬ足探りで探っていく。そのあとは、5メートルほどの垂直のはしご。怖いけれども、これで結構距離は稼げる。そのあとも、くさり場は何カ所もあり、大変であったが、「カニのヨコバイ」に比べれば、たいしたことはない。しかし、下りといえども、本当に距離があり、しかも慎重に気をつけていかねばならないので、いつしか、くたくたになっていた。いつも下りはほとんどノンストップで行くのだが、今回は何回も休まないといけないほど疲れ果てていた。2時間以上かけて下った剱山荘で買った「ネクター」のなんとおいしかったことか。一旦キャンプ場に戻り、テントを片づけ、荷物をまとめた。ここから別山乗越までの登りは急に背中が重くなり、囚人のようにとぼとぼと歩いていた。別山乗越からの雷鳥坂の下りは、背中の重みに任せ、走るように下っていったが、雷鳥坂から、室堂までは、意外にだらだらした登りが続き、観光客がへらへらと、笑ったり走ったりしている横を、一歩ずつ牛歩のような足取り、それもしょっちゅうとまり、はあはああえいで室堂にたどりついた。それが、5時ちょっと過ぎ。定期便のバスは5時が最終であったが、観光シーズンのため、5時45分の臨時バスに乗ることができてラッキーであった。(このバスがなかったら、また雷鳥平に戻ってテントで一泊するしかなかった…)立山駅に着いたのは6時45分。これから、車を運転して、家に着いたのは、夜中の1時過ぎであった。
 大変な、本当につらい山行であったが、「My百名山」の100座目をこんなすばらしい山で飾ることができて本当によかった。
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雷鳥坂から立山 剱沢から剱岳 鹿島槍ヶ岳と御来光
カニのタテバイ 剱岳山頂の祠 剱岳山頂を歩く人影

100剱岳
(つるぎだけ)