天体観測衛星とその成果  編集・管理人: 本 田 哲 康 
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いま、日本の観測衛星や天文台が赤外線や電波などを捕らえ、宇宙の謎に迫っている。
 ここでは、その最前線の情報をお伝えします。   
・・・・・・・ 2006.12.14

 巨大な重力を持つ”ブラックホール”が引き起こすすさまじい天体現象。
 ちりやガスの向こうで起こっている星の誕生。 
 これまで光では観測不可能であったものが観測できるようになった。

 これまで、日本はX線や赤外線カメラを乗せた天体観測衛星を三つ飛ばしている。
 その成果は大きい。

 2008年8月に、電波望遠鏡による最新報告も追加した。星の誕生に関する新しい報告である。

 真実は、いつか・・・、必ず明らかになる。
 A 「なんてん」の成果
中日新聞の発表 2006年12月29日による   「ブラックホール一気14個」発見
 
  同紙によれば・・・・
 名古屋大南半球宇宙観測研究センターが、南米チリに設置した電波望遠鏡「なんてん」による観測で、地球の属する銀河系にブラックホールと見られる天体を新たに14個発見した。
 注:ブラックホール
 太陽の数十倍重たい星が、超新星爆発を起こして出来る天体。超高密度のため、地球の重さのブラックホールがあったと仮定すると、半径わずか1cm。光も吸い込まれると脱出できないため、目で見ることはできない。伴星から集まったガスが円盤状に渦巻き、一部が強力な磁力線によって上下に吹き上げられ、ジェットになる。

 B 赤外線天文衛星「あかり」の成果
赤外線天文衛星「あかり」のこと。・・・・ 星達の温度の違いを、宇宙の塵を透して見分ける能力を持つ。
赤外線天文衛星「あかり」→真空容器の中に入れて望遠鏡をマイナス267℃に保って観測している。これは、自分自体の発生する熱による妨害を避けるためである。
 
「あかり」の役目は、全天の地図造りである。現在、全天の70%が終了している。後半年かけると全天の地図データの収集が完了する。
 このデータによって、ビッグバンの起き方や最初に産まれた銀河などが解明可能となる。
 我々の太陽系以外にも惑星がついている。この状況も判明することになるのである。
 地球と同じ惑星の探査も可能となる。 「あかり」は、星の出来ている場所を観測できる。(山村一誠助教授:JAXA赤外・サブミリ波天文学研究系)
散光星雲IC1396の可視光観測データ
 輝く星雲の中に所々暗いガスの領域がある。
 これを赤外線で観測すると、可視光線では暗いところが、輝いて逆に明るく見えてきた。
 これは産まれたばかりの星であった。
 赤外線カメラは、それを識別することが出来た。
 JAXA宇宙科学研究本部 研究総主幹 小杉健郎(たけお)
  赤外線の光は波長が長い。
  光の波長では遮られてしまうが、赤外線はガリバーのように遮られないように向こうが見える。
  あらゆるものは、温度を持っているとその温度に応じた波(電磁波)を発生する。
  太陽の周りから出る温度は、6,000℃だから、従って、太陽はおよそ1万℃の光を放っているのだと 思って良い。
  これよりも温度が低いものは、赤外線を多く放出する。
  温度が低いものほど波長が長くなるのである。
  
「あかり」は、宇宙の様々な光の波長の赤外線を観測できる能力を備えている。
  赤外線は温度30℃〜−100℃などのものまで観測することが可能である。
  温度によって、波長が異なっている。これに備えて、沢山の観測カメラをもって宇宙を観測した。 
 
 ☆ 星の誕生に迫る 神奈川県相模原市 JAXA宇宙科学研究本部
     JAXA宇宙科学研究本部は、日本の宇宙探査の中心である。ha,
 数千億個の星の集まりである銀河。この膨大な数の星達は銀河の何処でどのようにして産まれるのであろうか?
 それは、まだ十分に解っていない。
 星は、銀河の中にある塵やガスが集まって産まれる。
 まだ温度が低く深い塵やガスで覆われているために、可視光線では見ることが出来ない。
 しかし、周りの塵やガスを暖めている。
 「あかり」は、これらの星が暖めたものを観測して、星が銀河の何処で産まれたかを突き止めようとしているのだ。
○ 大熊座にある銀河M81 大熊座にある銀河M81を可視光線で観測すると、白く光る渦巻き状の塵の集団にすぎない。これを様々な波長の赤外線で観測された。


3マイクロメートルの赤外線で観測すると、中央が白い発光体で周囲が赤色に輝きを放っている。(写真)これは4〜5000℃の比較的年老いた星の状況を捉えている。
 同じ場所を・・・
15マイクロメートルの波長で観測すると、中心に小さな白い発光体が見え、周囲に広がる赤い渦巻きが見える。
 これは、産まれたばかりの星に暖められたと思われるマイナス100℃ばかりの塵の集団だと考えられる。
両者を比べてみると、年老いた星は銀河全体に広がっている。
 しかし、産まれたばかりの星は、銀河の中心部と塵の渦巻き部分の一部に集中している。
ガンマ線 X線 紫外線 赤外線 電 波
可視光線
 C X線天文衛星「すざく」及び電波天文衛星「はるか」の成果
   ○ X線観測衛星「すざく」昨年’5年打ち上げられた。
 また、
   ○ 電波天文衛星
「はるか」1997年打ち上げ2005年まで継続して観測    されてきた。
                 二つの衛星は、星の最後の大爆発など、高温度の星達の観測に適している。
                                       目下、データ解析中である。
   
☆ 惑星状星雲 BD+30 3639
可視光線での観測の姿
 膨張して大きくなっている。
 星はガスを引きとどめられなくなり、ガスは外に拡散して流れ出している状況。
 真ん中には小さな輝きがあり、流れ出したガスは、リング状になって外で輝いている。
 これを、X線で観測した結果、
 この中心には炭素が存在していることが判明した。

 
これらの星に炭素があったことは、大きな発見であった。
 我々の体の大部分は炭素である。だが、・・・・。
 宇宙開闢の時には水素しかなかったのである。 
LINK  原子そしていのち
☆ 何故渦巻きになっているか?渦巻きのその中で何が起こっているのか?
 
これは、まだ、不明な点が多い。
 しかし、渦巻きの中心には太陽の100万倍〜1,000万倍の質量を持ったブラックホールがあることが解ってきた。
 ここに星達が引きつけられている。この引きつけられている星達がガスを引きずっており、また、ガスは星を引き留めようとしているのである。
 相互間のこの複雑な動きの中で、ガスの波が起きているのである。ガスの波の密度の高低が、渦巻き状に見えるのである。
 密度の高いところでは、ガスが集まって新しい星に産まれ変わろうとしているのである。
2 ブラックホールを探る
○ X線観測衛星「すざく」は、銀河の中心にブラックホールの存在している証拠を掴もうとしている。
☆ MCG−6−30−15 ・・・地球から2億光年の距離にある銀河
 ここから出る鉄の出すX線の波長を捕らえた。



 
横軸が波長
 普通の鉄の出すX線の波長と、スペクトルが随分と異なっていた。
 この銀河から放出する鉄のX線の波長のスペクトル幅が大きく広がっていたのである。それは何故か?
 JAXA 高エネルギー天文部研究系 満田和久教授は、そこに大きな重力が存在している証拠であるという。
 そこにブラックホールが存在するのだ。
 ブラックホールには、物質が大きな力で吸い込まれているので、その近くでは速い速度で大きな力で渦を巻いている

 吸い込まれるときに、重力のエネルギーが熱に変わり物質からX線が放出される。
 渦を巻きながら吸い込まれるときには、物質がこちらに向かっているときにはX線の波長が短く、今度は向こうに向かって回っているときには波長が長くなると言うことである。
 「すざく」は、そのX線の波長の長さの変化を観測しブラックホールが存在する証拠を入手したのである。
一方、電波天文衛星「はるか」もブラックホールが引き起こす天体現象を観測した。
 電波天文衛星「はるか」は、スペースVLBIというきわめてユニークな方法で行われた。望遠鏡が大きくなると観測物の分解能が高くなる。しかし、巨大な望遠鏡を造るには限界がある。
 VLBIというのは、小さな望遠鏡をいくつも連携させることで、大きな望遠鏡の役割を果たそうというものである。
 電波天文衛星
「はるか」は、地球から遙か遠い2万キロ離れたところを回っているのである。これと地上の望遠鏡を組み合わせれば、口径3万キロに相当する望遠鏡を造ったことになるのである。
 昨年、観測を終えた
「はるか」であるが、それまでに送られたデータによって、新しい宇宙の姿が現れているのである。

☆ M87 (銀河)地球から5000万年光年も彼方にある銀河である。
 銀河の中心からジェットが激しく吹き出していることが可視光線でも観測できる。
 この銀河の中心には、太陽の大きさの26億倍もの超巨大な質量の超巨大ブラックホールが観測できたのだ。
 ジェットはそのブラックホールが引き起こす天体現象であると考えられている。
「はるか」は、このジェットの詳細な構造を捕らえようとした。
 JAXA 宇宙情報・エネルギー工学研究系

 平林 久 教授は、
 「ジェットの大きさは長さ1000光年であるが、「はるか」はこのジェットの根元を拡大して、根元から8光年までのデータを掴むことが出来た。
 空洞のような処や、ジェットのうねりが見えた。」

     と述べた。
 宇宙の状況は、まるで深海から陸上をのぞくようなものである。
 見えるのは、暗い海ばかり!空気や塵がじゃまをして、詳細なことが解らないのだ。
 衛星はこんな状況を解決して、宇宙を具体化させてくれたのだ。
・・・と言う。
○ 太陽観測衛星「ひので」が今年打ち上げられた。(2006年9月鹿児島から)
   地球の周りをおよそ1時間40分の早さで一周している。
   軌道はちょうど日の出と日の入りの線の上を回っていることになり、終始連続して太陽を観測できるの  だ。
   毎朝、衛星のチェックをして正常かどうか、衛星の各部の温度を調べた上で、衛星からのデータを  受信している。
   通信時間は最大でも一日に15分間しかない。スタッフは緊張して仕事をしている。
 2006年9月23日、鹿児島から打ち上げられた。打ち上げから1ヶ月後、観測が開始された。
 地球の周りをおよそ1時間40分の早さで一周している。
通信時間は最大でも一日に15分間しかない。
スタッフは緊張して仕事をしている。
☆ 太陽の様子    X線による 磁力線観測 天体で唯一、太陽だけがその姿を見ることが可能な星である。
   可視光によるコロナ観測・磁力線・・・今までに見たこともない姿がそこに見えた。
 黒点があると、時々、フレア爆発を起こす。
 時々、ループ状のものが現れる。コロナの磁力線の形が変化している状況が解る。
 X線望遠鏡よりも解像力が五倍高い可視光の望遠鏡で見ると・・・
 一本一本が磁力線である。
3 謎のループ
 南米チリ・アンデス山脈のラスカンパナスで1400mの高地にある数々の望遠鏡によって、1998年日本の「なんてん天文台」が活躍している。
 波長1〜3mmの電波を捕らえる望遠鏡である。
 高い山の上にあるので、地球の大気の影響を受けないで高い精度のデータを得ることが可能である。
 
「なんてん天文台」がねらっているのは、私たちの銀河系の中心である。
 この銀河系の中心部には密度の高いガスが存在することが知られている。

 
このガスは激しい運動をしているのではないかと考えられているが、その構造などの詳しいことは解っていない。
 「なんてん天文台」で、この部分を調べてみると、これまで解っていなかったことが解った。
 「なんてん天文台」リーダー 名古屋大学大学院理学研究科 福井康雄教授は、ループがあることを解説された。
 2005年「なんてん天文台」は、更に高度な精度を得るためにこうど5000mの場所に移転した。(アタカマ砂漠・チリ)ここでは、今まで行われたことの無かったサブミリ波の観測を始めた。
 これで、今まで見ることの出来なかった、ガスの密度の細かいところまで一層細かく見えて、星の誕生の秘密にも一層深く迫れると期待されている。新たな挑戦が始まった。
 5〜800光年ほどの巨大な輪が立ち上がっていることが解った。
 いったん吹き上げられたガスがループに沿って、落ちてきてループの下に集中する。
 ループの根本にガスが圧縮される場所が出来る。このガスの固まりの質量は太陽の10万個分の大きさである。
 名古屋大学大学院理学研究科 福井康雄教授は、ループを解説された。 青いところは密度が高い 高さ500〜800光年 太陽の10万倍の質量
 銀河の中心で、何故このような巨大なガスのループが出来るのだろうか?
 この周辺を取り巻く磁力線に着目し、シミュレーションした結果、ループの様な形をしていることが解った。
 そこで、上のループは、磁力線と関係があるのではないかと考えられるようになった。更に、このループ状のものは銀河系中心部で盛んに起こる爆発的な星の誕生と深い関係があるのではないか?と氏は考えている。ループの根の処にガスが集中しているのである。
4 電波望遠鏡による観測   '8,8 高校講座「地学 星の誕生」 埼玉県春日部女子高校教諭 鈴木文二 氏 解説
(1) 惑星と恒星の違い
○ 惑星 恒星の周りをへめぐる星。水星・金星・地球・・・などは、宇宙の塵が集まってできたものである。
惑星の放つ光を反射しているが、自ら光を放つことはない。
○ 恒星 地球のおよそ33万倍の質量を持つ大きな星。太陽のように、水素を主とした気体によって構成されている。
  銀河の中で、今でも数え切れない程の星が産まれ続けている。銀河は恒星の大集団である。
 銀河は無数にあり、宇宙に泡のように浮かんでいる。
 星は銀河の中で誕生している。銀河の存在しない場所・ボイドでは星は産まれない。
 では、銀河の何処で星は産まれるのであろうか?
 星は、恒星と恒星の間の特別な場所で誕生する。
 恒星と恒星との間には、星を作る材料が存在する。ここには、水素原子が存在。
 通常は、平均して1立方pに0.1個、水素原子が存在している。
 地球上には、1立方pに原子5×10の19乗個。(5,000兆の1万倍)
星が産まれる場所は、特別に水素原子が集まった場所である。冬の代表的な星座「オリオン座」左にペテルギルス、右下にはリゲル。その中央には三つ星がきれいに並ぶ最も見つけやすい星座の一つである。
 オリオン座の名前の由来は、名ハンターオリオンに由来する。オリオンは勇敢であったが、余りにも乱暴であったため、大地の女神「ガイア」がサソリを使って殺したと、ギリシャ神話では伝えられている。
 三つ星の下には、赤い星のようなものが見える。これを拡大すると、これは、美しいオリオン大星雲であった。こここそ星の産まれる場所であった。
 もう一つ、三つ星の左側には馬頭星雲がある。馬の首のような形をしているのでそう呼ばれている。ここも、星が産まれる特別な場所であった。
 宇宙には、このような場所が数え切れない程に存在しているのである。このような場所のことを「星間雲」と呼んでいる。
 
大きさは30光年。これは、地球と月までの距離の7億5千万倍の距離となる。ここには、1立方p当たり20個の水素原子が存在する。
  水素の密度は低いが、規模が大きいので、この中の水素を集めれば、太陽の大きさの恒星が千個程作ることが可能である。
しかし、この星間雲の特別な場所でないと、星は誕生しない。 
  国立天文台 野辺山(八ヶ岳の麓) を見学。そこには、可視光線以外の電磁波を観測する電波望遠鏡がある。直系45mで、波長が1mm〜10mmの電波を観測している、世界最大級の電波望遠鏡。重量は700t。誤差は0.1mm以下に抑えられている。電波は反射させ上部の副反射鏡に集められて、更に反射させて、アンテナの下にある受信装置に送られるようになっている。
 マイナス269℃まで冷却させて精度の高められた受信装置でデータが処理される。
 感度は、我々の携帯電話を木星に置いたとしても、それを受信することが可能だという。敷地内では携帯電話を使用することは禁止されている。
 この電波望遠鏡によって、星の誕生する場所と星がどのような成分で構成されているかを知ることができる。
  オリオン座にCOの分布を重ねて見ることができる。
 赤い部分が密度の高い部分である。馬頭星雲にCO密度の高い分子雲を確認することができた。
分子雲の中の水素原子密度は、10万個であった。
 アルコールやアルデヒドの存在も認められた。更に、地球上にはあまり存在しない以下のものも認められた。
 OH CH
2 CH3 NH NH2 SH C2H C3H C4H C5H C6H C7H C8H CN C3N C5N HCCH CH2CN CH2N HNO C2O NO SO HCO MgNC MgCN NaCN C2S NS SiC SiN CP SiCN FeO
分子雲の中に認められた各種の分子である。
 星は分子雲が縮まって行くことでできる。
 @ 銀河の渦巻き運動による力が関係する。
 A 非常に大きな星が爆発したときの力が考えら  れる。

 
このような力で、分子雲が圧縮される。
 これによって引力が生じてやがて渦巻き運動が生じ、お互いを引き合って一段と収縮され密度が高くなる。これが進むと温度が上昇し光り輝くようになってくる。この状態を原子星という。(1,000万K以下の温度)
 しかし、まだ一人前の恒星ではない。一人前の星になると、主系列星と呼ばれるようになる。
 星の中が、1,000万K(ケルビン)以上になると、4つの水素原子が核融合をはじめて一個のHeを作りだしすさましいエネルギーを放出するようになる。(1gの水素がヘリウムに変わるときに1億Kcal)
 核融合反応が起こってこそ、一人前の主系列星と言われるのである。この状態になって、星の収縮は止み安定した大きさに定まることになる。
 これで星は長い間光り続けるのである。