ないしょの王君 〜序曲T〜 (ないしょシリーズ Ver.Fate)
―――王が夢見し、その永遠……って、そんなに重い話しなン?
第001記
Ver.1.00
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 鬱蒼と生い茂る森―――それを更なる力で圧倒しているは、闇。

 ―――黒夜の世界

 しかし、星の輝きは次第に失せ、月光の支配が既にこの世(ちじょう)より退位(う)せたそこは、光に侵食され始めていた。
 が、この森の中に於いて、星の輝きは如何ほどのものであっただろうか?
 ただ、薄闇へと変じていることが、朝の到来を告げているだけであった。



 そこには一人の少年が在た。
 まだ幼さを残す、小柄な少年である。
 しかし、泥に、煤に、そして血に汚れた鎧は所々が欠けており、自身の躰にも刀傷を負っていた。
 刀傷―――闘い、争い、奪い、簒奪………それが何にせよ、彼の少年は深く傷付いていたのである。
 彼を彩る金色に輝く髪はやはり乱れ、浅く、しかし呻くような呼気は早く、もう長くはなかろう。

 ―――死、が視える。

 だが何故だろうか?
 その身が一欠片の曇りもなく、輝いて見えるのは―――。
 剣に手折れた敗残兵のようでありながら、より一層の輝きを放って見えるこそが、王君と言わんばかりの神々しさであった。

 そう彼は王であった―――



「……夢を、見ていたよ」

「夢、ですか」

 それこそが泡沫の夢、と言わんばかりに、その少年の側には深い紫紺のローブを纏った老人が起っていた。

 薄陽炎の老人が―――

「あぁ。
 見知らぬ国々をたくさん見たよ」

「…………」

「―――そこでも、私は戦いに、闘いに明け暮れていたよ。
 もう幾星霜争ったか解らぬほどだ」

「騎士王が逝く道は戦場へと続く道とはいえ―――いやはや、それは豪気なことですな」

「……師父は、最後まで変わらぬな」

 微かに、ほんの僅かながら笑みの形を浮かべる、少年。

「―――満足、しましたかな?」

 それは、何に?

「満足だ」

 しかし、即答。
 その解は、予め用意されていたかのように一片の曇り無きものであった。

「その身は人間(ひと)を離れ、人間(ひと)の道を歩めなかったとしてもですかな?」

「もとより。
 この身は国の為にあり、国を活かすために我が身(ひと)を殺す。
 そこに何の迷いがあろうか」

「今、その国が斯様な結果になっていおうが?」

 それは、国を分けての動乱となってしまった、今の状況―――

「それは、確かに遺憾である。
 しかし私は『私が信じた道』を信じ、この王道を進んできた。
 その結果が、斯様なことであるならば私は受け入れよう。
 悔いはない」

「それは、度し難くも傲慢な物の考えですな」

「認めよう。
 しかし、この国を想って進めてきた信念、理念、そして情熱はあったつもりだ。
 例え民衆の怨嗟の声に塗り潰され、この身を劫火に焼かれようとも、私はそれすらも受け入れよう。
 私は、私の王道(おも)いは、この身は―――全てここに至る人生(みち)であったのだから」

 既に、口唇(くち)は空気を取り入れるだけでしかない。
 呼吸のみである。
 しかし、その鈴を転がすような声は、辺りに深く染み込んでいったのである。

 不思議と清涼―――
 深く静謐―――

 響くは、少年の音色。

「見事なり。
 喜も、怒も、哀も、楽も全て受け入れ、そして歩んでこその王道。
 その朽ち果てた身―――確かに最後まで騎士王(おうどう)を歩んだわ」

「ふふっ。初めてよな。師父に褒められるとは」

 微かに揺らめく、陽炎の老人。

「……だが一つだけ謝らせて、いや訂正させて欲しい」

「………聞きましょう」

「最後の―――最後のこの一時だけ、私は王道(おう)でなく人間(ひと)であったと」

 陽炎の老人は、語らない。

「戦いに、闘ったこの身。最後の最後まで闘った。
 でも、最後に個人(ひと)を知り、個人(ひと)を見、個人(ひと)を愛した。
 あぁ〜。
 私はなんと贅沢で、幸せであったことか。
 己の信じた王道(みち)を行け、そしてまた捨てたはずの人間(みち)を進めた。
 私はなんと果報者であったことか」

 その躰は薄弱としており、個を判別できない陽炎の老人は、しかし確かに微笑んでいた。

「それは良かったですな」

「うむ」

 沈黙。
 しかしそれは、何処までも柔らかく、そして暖かかった。
 だからこそ、彼の騎士王は想う。
 あ〜またこの僅かなる時間(とき)の流れの中、至福に包まれていようとは何と贅沢な身だ、と。

「…………済まぬな、師父よ。暫く休ませてくれ。
 ベディヴィエールが戻ってくる、その時ま、で―――」

「休みなされ、尊き騎士王よ」

 朝靄に包まれるように陽炎の老人が消え、辺りはまた静寂に包まれることになる。

 最後の刻に向けて―――






「旧き、そして最も尊き友よ。
 あれが私の自慢の誇り高き『娘』だ」

 そこは何処であろうか?
 常闇の夜の間。
 何も見えない黒の空間。

「――――――」

「ふぅぁーはははっ。自慢の『娘』だからのぅ」

「――――――」

「―――頼みが、ある――――――」

「――――――」

「この身をやろう。それが報酬。
 ………………
 ……『娘』を、頼む」

「――――――」

「無論。
 その為に、あの『娘』の代わりにこの身を『世界』に晒そう」

「――――――」

「親ばかと笑ってくれて良いわ」

 しかしそこには自嘲はなく、なんと暖かいことか。

「これからは、もっとあの『娘』自身が幸せになっても良いと思うのだよ。
 ほんの一時でなく、これからの人生(みち)を―――」


 ――― その想いの重さ分……… ―――

 ――― その『娘(み)』、預かろう ―――


 声は、それっきり途絶えた。
 また元の常闇の夜の闇。
 原初の黒。






 鬱蒼と生い茂る森―――

 しかし、そこはなんと静謐で荘厳に満ちた場所(もり)であろう。
 そんな森厳な聖域が、朝露に濡れ、届かぬはずの日の光が柔らかく辺りを包み込んだ早朝

 少年―――騎士王と親しまれた『娘』は、戦乱の生涯ではあったのだが、
 今、穏やかな笑みの中、一人の騎士に見守られて静かな眠りについたのであった。

 それは、とても安らかなる笑顔の眠りであった―――

 とは後に、彼の騎士王を看取った騎士の、それは誇らしげに語った想いであった。



後書きという名の言い訳
 在る意味、予想通り?(笑)
 もはや忘れ去られた風塵よりも軽き人生を歩んでいる、Vatshuです。
 ………………
 ……言い得て妙だ、と一人悦に入ったのはナイショです(苦笑)
 いやぁ、去年の冬コミの帰宅時に既に兆候が出ておりましたが、まさかあすこまでとはねぇ(滝汗)
 だが主治医(日本担当医)よ!
 あっしに何もするな、と言った言葉を受け、ヒマヒマ病―――バカ(笑)―――で死ぬるわ、と応えた時
 「安心しろ。
  躰自体が休眠状態なものだし、そもそもがそんだけエネルギーを摂取していないなら脳が休眠を欲する。
  だからイヤでも自然な眠りにつけるから安心しろ。
  故に、Vatshuが今考えなければいけないことは、辛いだろうが少しでもメシを食うことと…………」
 ここまでは良いのだが―――

 「『三途の川の招きに応じない』ことだけだ。さすがに渡河した時の責任までは取れンからな」

 信頼はしているが、ときどき(?)サラッと言ってくれるその一言が、あっしをとってもときめかせるぞぃ(;^_^A
 ………………
 ……と戯れ言は置いておくとして―――
 Fateです。
 セイバーです。
 ―――以上です(核爆)
 てーか、これ以上何を言えと(w
 まぁあり得なかった、Good Endを夢想しているストーリーってことで。
 で、相も変わらずVatshuは設定好きです。
 よってこれも妙な設定はてんこ盛り、てーか、設定集(?)を先に描いてます(苦笑)
 まぁそこかしこに伏線として書かれるでしょうが、さてはて無事に回収されるのでしょうか(ヲぃ

  何か感じる事がありましたら、どんな事でも構いませんのでメールを、よろしく、です
  それでは、またいつの日にか………




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