VALEOの自動車用セルモーター、D6RA64(多分マセラッティ)の修理依頼がありました。
10年間故障もなく稼働していた稀な個体です。
が、電源をつないでもうんともすんとも言いません。
ブラシのフタを開けたら粉塵が大量に
ゴム部品は硬化して割れてしまいました。
この角度からはわかりにくいですが。
ブラシがありません。
ここまで減ったのは初めてみました。
こちらが新品状態です。
上の写真と見比べてください。
特に電源側はえらいことに。
ブラシに鋳込んであるはずのリード線がむき出しです。
ちなみに左が新品。18mmあります。
アース側も残りこれだけでした。(左新品)
カバ^ーを外すと、クラッチカスで汚れてはいますが内部は綺麗でした。
減速部分も綺麗です。
マグネットはブラシの削れたカスが詰まってましたが剥離もなく問題ないようです。
減速部分の蓋。運が悪いとこれが外れてショートして大惨事になることも。
幸いこのモーターはしっかりはまってました。
フタを取るとまだグリスが保持されてます。
ところがシャフトを固定しているはずのサークリップが抜けており、もうちょっとでシャフトが抜けてしまう状態でした。
手ではめようとしたらブカブカで固定できませんでした。張力が全くありません。
これは新品部品が出ませんので締めて再使用します。
減速部の遊星ギアはグリスのお陰で問題なしでした。
ワンウェイクラッチもしっかり効いてます。
樹脂製の外周ギアにも破損はありません。
汚れてはいますがマグネットも無事。
ちなみに交換する場合は時計回りのマグネットを使います。(右回りと左回りがあります)
アーマチュアも綺麗です・・・。(削れているのはバランス取りのあとです。)
ギアもメッキが磨耗しているだけ。
ところが反対側のシャフトに問題が。
ここはケースのブッシュに支えられているのですがはっきりと磨耗して段付きになってました。
真ん中が摩耗している部分て直径6.05mm。
一番下の部分が本来の太さで直径6.15mmです。
ここは通常段はなく同じ太さです。
まあ、アーマチャを交換すると別途8000円かかるため、組み付けて様子をみることにします。
分解終了。
清掃にかかります。
パーツクリーナーでクリーンアップしたマグネット。
剥離の兆候すらない、当たりのマグネットです。
念のためエポキシ接着剤を流しこんで。
間を金属パテで埋めてマグネットを完全固定します。
減速ギアの古いグリスを落とします。
綺麗になりました。
再使用しようとしているアーマチュアに問題発生。
右下の部分に、ブラシが消耗しきったせいでむき出しになっていた銅線が、溶けて食いついています。
このままではショートして回転できません。
5箇所つながっています。
つながっている部分の銅線をほじくり出しました。
これでまわってくれればいいのですが。
古いブッシュを打ち抜きます。
これが先ほどご覧になった磨耗したシャフト部分を支えています。
でも本来ならば交換できるこっちが磨耗するはずなんですがねー。
こちらのブッシュはプーラーで引き抜きます。
センターのブッシュも同様に抜きます。
再生準備が完了しました。
1日オイルに漬け込んでおいたブッシュ。
センターのブッシュ。
モーターエンドのブッシュ。
先端のブッシュをそれぞれ打ち込みます。
減速部にグリス充填。
減速ギアをはめ込みます。
フタをします。
ゆるゆるだった抜け止めサークリップは一度プライヤーで締めてからセットします。
ぱちんとはまりました。
減速部分完成。
マグネットにアーマチュアをセットします。
シムを入れてクリップで固定します。
グリスを詰めたフタをします。
新品ブラシをセット。
完成です。
今回の交換部品。
これで代金10200円頂きました。(基本修理7000円、部品代+追加工賃3200円:当時の価格)

(2012年3月急病で全身麻痺になり作業が困難になりました。
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