バレオセルモーターの組み付け その2
今回セルモーターを分解するのは、はがれたマグネットを補修あるいは補強するためとブラシやブッシュを交換するためです。
マグネット接着にはエポキシボンドを使いますが、90分タイプはうまく充填できず、新たに金属用パテを購入する羽目になりました。
エポキシ接着剤だけだとこのとおり。流れてしまいました。
このセルモーターはマグネットがはがれていなかったのでマグネットの間をパテで埋めて補強したいのですが。
もしはがれていたら隣のマグネットと違う極性になるよう順番にくっつけます。(マグネットは表と裏でN極、S極となっていますので注意。)
割れていたら思い切ってハウジングごと新品に換えたほうがいいかも。補強済みのハウジングが送料ともで約11000円で購入できます。
ホームセンターでいいもの見っけました。
ちくわの中にチーズを入れたようにエポキシ樹脂と硬化剤が2重になっていて、しっかり混ざるように練ると高熱を出して約10分で硬化します。
きれいに混ざると熱くなってきます。熱くなったらすぐに作業しないと思ったより早く固まってしまいます。
ちなみにこいつは粘着力が強いため接着剤としても使えます。
このように隙間を埋めていきます。
マグネットの面より飛び出すとアーマチュアがすれて回転できなくなるため、やわらかいうちにしっかり均しておきましょう。
いよいよ部品の組みつけです。
アーマチュアのギアがないほうにたっぷりウレアグリス(耐熱200度)を塗ります。
ベアリング役(?)の段つきワッシャーをこういう向きで組み付けます。
このワッシャーはマグネットハウジングとアーマチュアの間のスラスト方向の位置決めをしています。
上面にもグリスを塗っておいたほうがいいでしょう。
ワッシャーが落ちないように(マグネットにくっついてしまう可能性あり)アーマチュアを固定しておいてハウジングをかぶせます。
するとハウジングのブッシュからこのようにシャフトが突き出ます。
分解時にはずした2枚のシム(ワッシャー)を入れます。このワッシャーもアーマチュアと一緒に回転しますのでグリスを両面に塗っておくこと。
Cリングをこのように溝にはめます。もし溝の位置が悪くて入らないなら、内側にごみをかんでいるか、ブッシュがハウジングにきっちり入っていない可能性があるので、もう一度アーマチュアを抜いてブッシュを入れなおすか掃除してからやり直します。それでも入らなければシムを1枚抜いてリングを入れます。
プライヤーでクリップを勘合します。
この後アーマチャを手で回して回転することを確認してください。マグネットに接触してるため回転が重いのは問題ありません。
D6RA15ではここにアルミキャップが被ってグリスを保持しています。
これがアメリカエンデュララスト製の補修キット。日本国内価格で2500円ぐらい。
ブラシ2個、ブラシホルダー、ゴムパッキン、スプリング、絶縁板、ブッシュ3個。
ブラシホルダーにゴムのガスケットをセットします。今回はブラシホルダーはキットのものを使わず純正のものを引き続き使いました。
ここをあわせてください。
ホルダーをガスケットを介してハウジングに載せます。
このホルダーは樹脂製で非常に割れやすいので組み付け時は絶対に無理な荷重を欠けないこと。
特に後で出てくるスプリングのセット時にはご注意を。
新品のブラシを用意します。
このモーターのブラシはリペアキットの新品時18o、純正16mm、分解時10oでした。あと2万qぐらいでなくなる計算です。
ブラシを押さえるスプリングです。
右がついていたもの、左がリペアキットのものです。巻き径が大きいですが取り付けには問題ありませんでした。ただ真ん中の幅が狭いため取り外すときにドライバーの先を引っ掛けるのが難しそうです。
参考。
分解時の位置関係。
スプリングのベロをマグネットの爪に引っ掛けるように押し込みます。
ブラシを入れる前にスプリングをセットします。
スプリング先端をアーマチュアに接触させ、この斜面にバネのベロをすべらせるように押し込みます。
カチンという手応えがあればOK。
ホルダーが固定されたか確かめてください。
新品ブラシは2mm程長いので16mmのところに線を引いて
サンドペーパーで削りました。ただしD6RA15以降では新型の蓋を使ってあるので削る必要はありません。(後述)
細いドライバーでバネを持ち上げブラシをセットします。
このときバネを弾いてしまうとホルダーは簡単に割れるので注意。
念のためバネの下に割り箸等突っ込んでおけばバネを弾いた時に安心です。
入力側のブラシの金具をグロメットの溝に入れます。
キットの金具はちょっと長いのでヤスリで1mmほど先端を短くします。
アース側の金具をこのようにセットし絶縁板を入れてブラシ交換完了です。
バネのベロがマグネットハウジングにきちんとはまっていることを確認して下さい。
もしブラシホルダーが傾いていたり浮いていたらやり直します。
ブラシが長い場合、このようにバネの先端がブラシホルダー上面より上に出てしまいフタと干渉します。この場合はバネが上面からでなくなるまでブラシを削ってください。
このままフタを締め付けるとこのようにフタの裏側からバネが刺さってしまい2箇所膨らんでしまいます。(D6RA7の場合)
ちなみにこいつがD6RA15以降の最新型の蓋。バネの先端の分の逃げがありますので思い切り締めてもバネが当たりません。なのでこの蓋がついていればブラシを削る必要はありません。
金具の外に出た部分に元のコードからはずしたゴムキャップを取り付けます。
これでブラシ交換が終わりました。
ゴムのカバーを載せます。このカバーを入れ忘れると入力線と蓋がショートしてしまいます。
ゴムをばねの下に入れるとスプリングがブラシを押さえるのを邪魔するのでこのようにセット。
ブラシカバーを取り付けますが、ここのナットはセルフロックナットになっていますので思い切り締めずに軽く締め付けます
次は出力シャフトの組付けです。
ブラケットを裏返して、アウターギアを洗浄して、ウレアグリスかシリコングリスを充填します。
プラネタリギアユニットを押し込みます。こちらも十分にグリスを与えておきます。
リング溝がこのように出るまでプラハンで軽くたたき出します。
スペーサーを入れます。ここはシャフトと一緒に回転するか、摺動するかもしれないので、両面にグリスを塗っておきます。
Eリングを溝にセットします。
これは手で押し込めば入ります。
これもグリスを塗っておいたほうがいいでしょう。
はまったら渦巻状になっているスプラインにたっぷりウレアグリスを塗りこみます。
ひっくり返して裏ぶたを取り付けます。向きに注意してください。裏返しだとマグネットハウジングが組み付きません。
相手となるクラッチユニットのスプラインにもウレアグリスを塗っておきます。
プランジャーにシーソーをセットします。シーソーにクラッチユニットをかませてクラッチユニットごとシャフトに通します。シャフトに薄くグリスを塗っておくこと。シーソーの支点にピンを入れます。
ストッパーリング、Cクリップをシャフトにセットします。このクリップは下のストッパーリングの内側に勘合しますので、プライヤーで径を十分小さく絞っておきます。
ストッパーリングを上に持ち上げて
ベアリングプーラーを使ってストッパーリングの内側にCクリップが完全に勘合するまで引っ張りあげます。
プーラーがあれば簡単ですが無い場合非常につらい作業となります。
(バッチーンという派手な音が出るぐらい堅くはまります。)
きれいにはまりました。
クリップがストッパー内側の溝にはまり込んでストッパーが固定されました。
プランジャーにスプリングをセットます。て
電磁石をセットします。
T20のトルクス2本を締めます。
アルミのカバーを取り付けます。
5mmの六角ボルト3本(D6RA−15はT25トルクス3本)を締めて、電磁石をとめるT20トルクス1本を締めると完成。
電磁石のモーター側の短いほうの端子に、モーターから出ているコードを締めます。
日付と走行距離をテプラ等で貼り付けて完了です。
最後は動作確認です。
できれば充電されている車のバッテリーからブースターケーブルで電気をもらい、長いほうのボルトをプラス(赤)ではさみ、アルミボディをマイナス(黒)ではさみます。ただしこのままではうんともすんともいいません。
今度は長いボルトと平端子(セルボタンからの信号の入り口)をコードや、ドライバーなどでショートさせます。この状態がセルボタンを押した状態です。これでまずピニオンがストッパーまで当たるまで飛び出してからモーターが勢いよく回るはずです。
実は端子のある電磁石の底にモーターを回すスイッチがあり、プランジャーをいっぱいに引き込むとスイッチが入るようになっているのです。ですから充電不足のバッテリーの電力ではピニオンが飛び出してもスプリングの張力に負けてしまい、プランジャーが電磁石の底のスイッチまで届かないことがあります。そうなるとカチ、カチとピニオンが飛び込む音だけしてモーターが回りません。
もし回らない場合はもう一度ブラシ回りを入れなおします。
今回も最初はうんともすんとも言わず、壊れたと思いましたが、何回か組みなおしたら回るようになりました。よかったあ。

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