ドイツマイスター修行




修行と卒業試験


さて久しぶりに修業の話に戻りたいと思います。3年目にもなると色々なことが分かってきます。と同時に学校での卒業試験も近付く・・・ということで精神的にも追い詰められていきます。

色々なことが分かってくるとはいえ、仕事に対して常に不満を抱いていた僕、結局最後は親方に対し感謝の気持ちが芽生えましたが、その時はそんな余裕もなく彼に対しても不満だらけでした。後に誤解だったとなるわけですが、毎日の仕事の中、自分のやる気と反し肩すかしを喰らうような状況にストレスも溜まります。

具体的に言うと僕ばかり掃除で、色々な仕事も、もちろん任されてはいましたが他の弟子はゆっくり仕事していても製造などつまり肉や加工の手伝いを出来ていたわけです。元来負けず嫌いの僕は“だったら掃除から何から何でも来い!”とりあえずある仕事をとにかく終わらせて、終わったら自分で仕事を探し、それでも見つからなければ親方に仕事を聞くそんな100パーセント以上の力を振り絞る毎日でした。

2年目に入った時に一度親方に反抗した僕ですが、それで状況は良くなったもののまだ不満だらけだったのです。それほど僕の“やる気”が強すぎたのだと思います。

実際の実技や学校での勉強以外にも、この時期たくさんの食肉加工に関する本を買い勉強しました。ただこれは勉強というよりも僕が何よりも好きなこと、でしたのでそこに対する興味も並大抵のことではありません。とても楽しくわくわくしてました。

この時期同時に学校からフランスに研修旅行にも行きました。僕は3年目に入ると冷静な目も持ってきていて、ドイツの食肉加工品とイタリア・スペイン・フランスと比べるようになります。もちろんその土地により味の趣向が違うわけで一概には言えませんが、ドイツは生ハム・サラミだけが弱い、と思いました。その他の食肉加工大国とは明らかに違う生ハム・サラミに、イタリア・フランスに特に憧れを抱くようになります。

研修は興味深いものばかりでした。フランスでは自らトサツすることは無くなり、国内に2つの大きなと畜施設、あとの原料肉の大半はドイツから来ていること、同じようにマイスター制度の様なものがあり、その施設での研修ではフランスの子供たちは物資に恵まれていることなど興味深い内容でした。物資に恵まれているとは、例えば骨を抜く作業の練習を行う場合、ドイツの学校では1頭を皆で解体していくのですが、フランスでは一人に一つ、といった具合です。フランスの肉屋さんはサラミだけ作っているところや生ハムだけ、など特化しているところが多いことも新鮮でした。

この時知り合ったフランスの研修先での先生に、フランスで働きたい旨を伝えとりあえずいつでもコンタクトをとれる状況を作っておきました。

話は前後しますが、日本に帰ってから、イタリアの施設を見学する機会があり2か所見学に行きました。その時僕はマイスターになっていたわけで、相手にはそのことは隠し行ってきました。なるべく察せられないように質問も素人の様な質問をしながらでしたので一苦労でしたが、全てを統合するとやはりドイツの食肉加工はすごい!ということに至ったわけです。しっかりと勉強すればイタリア・フランスの様な加工品も作れる、実際に作ったことは無くても、理論がそれを解決してくれる、そういった濃い勉強が出来ます。

まず豚を一頭与えられてソーセージからサラミから生ハム・・・それをと畜から出来るようになるのはやはりドイツだけです。修業中は、灯台もと暗しで見えなかったことが見えてきます。改めてドイツで修業して良かったと思います。

結果的にフランスでは修業は行いませんでしたが、皆さん先ほどのと畜の話からも分かるように肉の鮮度の観点からもドイツは素晴らしいことがお分かりいただけると思います。

さあ修業の話に戻りますが、この仕事をやめようと思ったことは一度もないわけですが、この修業先を変えようとはほぼ毎日思っていました。それくらい納得いかないことも多かった、ということです。

しかしながら修業はもうすぐ終わる・・・今は耐えて学校も卒業しなければならない。卒業したら出ていく!そしてマイスターの学校に行く、明確な目標があったから耐えて出来たのかもしれませんね。それよりも何よりも、きっと自分で商売したらもっときついのだろうと思っていたので、こんなことで萎えていてはダメ、ここでやりきらねば!

いつも精神ぎりぎりのところで戦っていたと言えます。


ハムソーセージ専門店 AKITA HAM
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