風景
街角ごとに立っている
亡霊達のうつ向きかげんの
影の中を歩いてゆくのは
私のない私
夜がふけた
きりきりと闇に穴を開ける
存在の呼気に
耳かたむけるものこそ私
遠ざかり近づく
永劫の足音に鼓動をのせて
街から街へ
かけめぐる風
私
私とはこの存在のなかで
上へ登ろうとする力と
下へ降りようとする力の一点です
私には憎悪の重力もないし
愛の引力もない
他者からの風に揺れる
グラヴィトン管
まぬけな慕情
報われることのない恋です