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  雨

雨が降る
うぶなもんだから野は涙っぽい
 雨が降る
冷たく激しく 吹きつける
おれの血は燃えあがる
喜びに燃える血潮に
甘くやさしく頬よせ
狂気に溺れる広い額に
温かい乳房おしつける
甘い温かい汁をすう おれはすう
蒼い深い目をみては
甘い温かい唇より

苔むした 古小屋雨は 神(かん)木立ち

おお ますます激しく雨は降る
楽しと心は燃え
急ぎあおる おれ逃すまじと
妖しいお前の熟れた肌にうもれば
おれも心は身震いし 燃えたぎつ
そしておれは駆ける おれは駆ける
おもえはますますあらわに
おれの目に おれの頬に
口に うなじに 生暖かい唇押す

おれを燃やせ
おれの燃え立つ 髪に肌に
おれはおまえの冷たき頬を
あまりに熱いおれの血潮のためと知る
おまえはおれを逃さじはなさじと
むしゃぶりつくごとく
 激しく降りそそぐ
ところかまわずなめまわされ
目もみえず
おまえも寝乱れ髪に むせかえり
おれの網膜は おまえの肌を
夢みるごとくかすみうつす

夢のように 夢のように
ほんとにおれはずぶ濡れになって
のどゴロゴロ鳴らし
しかしあおるあおる
ますますものすごく

木の間 草の間 甍も見えるに
 草わけ水わけ
    細葉の垣根 板びさし
おれはおまえの残り香に
うっとりひたりながら
しずまりゆく 髪をかきあげ
つぶやくように遠ざかる
疲れやつれるおまえを
じっと眺める ぼんやりと
紅色の血に湯気が立つ